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鉄道代行バスとキツネ、廃墟そして・・・ [旅行]

時は1980年代中頃、国鉄ローカル線廃止の嵐が吹き荒れた時代。そんなある年の10月、北海道へ渡った。勿論廃止予定線を乗り潰すのが目的でこの時は廃止間近の白糠線が主目的だった。他にも多数の線区を巡ったが、その中の一つ士幌線(帯広-十勝三股間、1987年3月廃止)へ行った時の事。

帯広から朝一番の士幌線列車に乗る。途中糠平から先は既に休止中で代行バスに揺られる。それは小型のマイクロバスで、乗客は大阪の会社員のオッサン、奈良の学生、それと僕の3人だった。全員が乗り鉄!周遊券の客。

後に知った事だが当時十勝三股の居住世帯は1戸で、そのためのバスだとの事。その唯一の住人がこのバス運転手の家族だというから驚いた。道理で物見遊山の客しかいない筈だ。

糠平湖を後にバスは山道を走る。暫く走った所で急停車。ふと見ると道端にキタキツネが一匹。眼光鋭く体は薄汚れ痩せ細っていたが、そこに本物の野生を見た。刹那運転手が餌の入った袋を投げる。キツネはそれを咥えると一目散に林の中へと消えた。ほんの瞬時の出来事だった。
運転手氏の話によると、件のキツネはこのバスが通ると姿を見せ、他のクルマの時には現れないという。

廃墟と化した途中駅に寄りながら終点を目指す。終点の十勝三股も既に廃墟で半ば自然に同化し、朽ちかけた給水塔が錆びた躯体を晒していた。その奥に見えた雪を頂く裏大雪の山々が妙に清々しかった。

この話には後日談がある。

その翌年、今度は福岡県の甘木線(基山-甘木間、現甘木鉄道【第三セクター】)へ行った時に車内で見覚えのある顔に出会った。それがなんと士幌線代行バスに乗り合わせた奈良の学生だった。こちらから声を掛けたが彼は怪訝な顔をするが暫くすると思い出してくれた。

日本の北端と南端で偶然出会うとは何とも奇遇ではある。
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